日本特有の文化「和歌」とは
和歌とは、五・七・五・七・七で読まれる歌の事で、日本特有の文化です。よく知られているものとして百人一首があります。百人一首に描かれている絵からもわかるように、日本で十二単などの着物を着る文化があった時代(平安時代)などに読まれていた歌です。
同じ五・七・五・七・七で読まれるものに「短歌」があります。大きく分けると短歌も和歌としてジャンル分けされるのですが、和歌が主に平安時代に読まれた物なのに対し、明治以降に読まれた物を短歌と言う事がほとんどです。
短歌は縛りがなく自由に表現できるのに対し、和歌には「枕詞」を必ず使用すると言う決まりがあります。
直接的な表現を表に出すのを好まなかった当時の日本では相手の心に響く言葉を歌にする事が良しとされていました。日本人らしい奥ゆかしい表現の物が多いので、日本の文化として広まりやすかったのだとも言えます。
【厳選】恋の和歌まとめ
現代人でも多く共感できる「恋」をテーマにした和歌は今でも人気があります。そんな恋の和歌を人別・気持ち別にまとめました。
【厳選】小野小町の恋の和歌まとめ
思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを
・古今和歌集
「恋しい人を思いながら寝たので、あの人が夢に出てきたのだろうか。夢だとわかっていたらそのまま目覚めなかったのに」と言う、キュンとするような恋する乙女の気持ちを読んだ歌です。
いとせめて 恋しき時は むば玉の 夜の衣を かへしてぞきる
・古今和歌集
「恋しくてたまらない時は、せめて夢で会えるように『着物を裏返して寝ると夢で会える』と言うおまじないをしています」こちらも、夢の中だけでも会いたくてじっとしていられないと言う気持ちが伝わってくる甘い恋の歌です。
【厳選】和泉式部の恋の和歌まとめ
つれづれと 空ぞ見らるる 思ふ人 あまくだり来む ものならなくに
「愛しい人が天から降りてきてくれるんじゃないか。そんな事を思わせる空を、あるわけがないと思っていてもつい期待して見続けてしまう」気軽に連絡が取れるわけでもない時代に女性が男性を待つ事への不安や切ない気持ちを歌った歌です。
見し人に 忘られてふる 袖にこそ 身を知る雨は いつもをやまね
「あなたに忘れられて寂しく暮らしている私の袖にこそ、わが身を思い知らせる雨が休みなく降り注いでいます」恋人との別れ、辛い失恋、儚い恋を歌った歌です。
【厳選】大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)の恋の和歌まとめ
恋ひ恋ひて あへる時だに 愛(うつく)しき 言(こと)つくしてよ 長くと思はば
・万葉集
「恋しいと思い続けてやっと会えたのだから、会えた時にくらい愛のある言葉を聞かせてほしい」恋する女性なら誰しも共感する歌ではないでしょうか。胸がキュンとする甘い恋心を感じさせてくれます。
思へども 験(しるし)もなしと 知るものを なにかここだく 吾が恋ひ渡る
・万葉集
「いくら貴方を思っても仕方がない事だと知っているのにどうしてこんなに恋しいのでしょう」こちらも、キュンと胸を締め付けるような甘い恋心が歌われています。
夏の野の 茂みに咲ける 姫百合の 知らえぬ恋は 苦しきものぞ
・万葉集
「私の恋心は、夏の野の茂みの中にひっそりと咲いている姫百合のよう。あなたに知ってもらえない恋は苦しいものです」片思いでしょうか。相手のいる人を好きになったのでしょうか。キュンと切ない恋心を野に咲く百合の花に例えて歌われています。
人知れず思い続ける姿が日本人らしい。日本の文化を感じさせる歌です。
【厳選】笠郎女(かさのいらつめ)の恋の和歌まとめ
白鳥の 飛羽山松の 待ちつつぞ わが恋ひわたる この月のころを
・万葉集
「貴方を待つ私は、白鳥が飛ぶと言う鳥羽山の松のよう。幾月もずっと待ち続けてばかり」愛しい男性が現れるのを心待ちにしている甘い恋心が伺える歌です。
君に恋ひ 甚(いた)も術なみ 平山(ならやま)の 小松が下に 立ち嘆くかも
・万葉集
「貴方が恋しくてたまらず、楢山の松の下に立って嘆き続けました」不倫の恋だとも言われている笠郎女が大伴家持に送った歌の一つです。ただ待っているだけの切ない恋心とも終わってしまった儚い恋を嘆いているようにも聞こえる歌です。
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【厳選】紀貫之(きのつらゆき)の恋の和歌まとめ
玉の緒の 絶えてみじかき 命もて 年月ながき 恋もするかな
「すぐに絶えてしまうような短い玉の緒(魂)を持ちながら、よく年月の長い恋をしているなあ」人生が短く儚いものである事を知りながらも長い時間を恋のために使っているなあと、短い人生の中でも恋は欠かせないものだと歌っているような歌です。
むすぶ手の しずくににごる 山の井の あかでも人に 別れぬるかな
「雫が落ちただけで濁ってしまうほど浅い山の水場では満足に水を飲む事ができません。それと同じように、満足いくほど話ができずに貴方と別れてしまった事が心残りです」たまたま出会った人と満足いくほど話ができなかった心残りを歌っています。片思いの相手と上手く話せないと言うもどかしさにも似た気持ちです。
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【厳選】胸キュン!甘い恋の和歌まとめ
ほととぎす 鳴くやさ月の あやめ草 あやめも知らぬ 恋もするかな
作者:読人知らず
「ほととぎすが鳴く月に飾るあやめ草のように、わたしの恋もあやめ(物事の道筋)を見失っているようだ」甘く切ない恋心を「あやめ草」と物事の道理や道筋を指す「あやめ」と言う言葉にかけて読まれた歌です。恋に夢中になっている様子がうかがえます。
昔とも 今ともいさや 思ほえず おぼつかなさは 夢にやあるらむ
作者:徽子女王(きしじょおう)
「昔の事なのか今の事なのか区別がつきません。こんな感覚を覚えるのはお会いしたのが夢だったからなのでしょうか」現実と夢の区別がわからなくなるくらい恋に夢中になっている様子が歌われています。
君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな
作者:藤原義孝
「貴方に会うためなら惜しくはないと思っていたこの命ですが、実際にお会いできた今となっては少しで長くあってほしいと思うようになりました」会いたくてたまらない気持ち、少しでも一緒にいたい気持ち、どちらも恋する特有の気持ちですね。胸がキュンとするような甘い恋心を歌われています。
【厳選】儚い恋の和歌まとめ
秋風に かきなす琴の 声にさへ はかなく人の 恋しかるらむ
作者:壬生忠岑(みぶのただみね)
「秋風を感じながら鳴らす琴の音にさえ、貴方の事が恋しく思えるはどうしてだろう」 琴の音にさえ恋しい人を思い出してしまうと言う儚い気持ちが歌われたうたです。
なかなかに 黙(もだ)もあらまし 何すとか 相見そめけむ 遂げざらまくに
作者:大伴家持(おおとものやかもち)
「最後まで添い遂げる事ができないのだったら初めから黙っていればよかったのに。なぜ会い始めたのだろう」一緒にいられる事ができないのなら出会う前に戻りたい。儚い恋の終わりを感じさせる歌です。
梅の花 咲きて散りぬと人はいへど わが標結(しめゆ}ひし 枝にあらめやも
作者: 大伴宿禰駿河麿(おほとものすくねするがまろ)
「梅の花が咲いて散ったと聞きましたが、まさか私が印をつけておいた枝ではないでしょうね」自分が結婚しようと思っていた女性が結婚したと言う噂を聞いたときに女性を梅の花に例えて歌った儚い恋の歌です。
【厳選】切ない恋の和歌まとめ
嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る
作者:右大将道綱母
「貴方がいない事を嘆きながら一人で寝る夜明けまでの時間がどれほど長いものなのか、貴方にはわからないでしょう」待つ事しかできない女性の切ない気持ちが歌われた歌です。
恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか
作者:壬生忠見(みぶのただみ)
「恋をしていると言う私のうわさがもう立ってしまった。誰にも知られないように密かに思い始めたところだと言うのに」人知れず恋しい相手を思う切ない気持ちと、隠してもそれが表に出てしまっていると言う状況がキュンとさせる甘い恋の歌です。
まとめ:日本の文化に触れてみよう
現代人でも共感できる事の多い恋の和歌。お気に入りの句を覚えてみたり読み人の名前を覚えるところから日本の文化に少し触れてはみませんか?お気に入りの歌人が見つからば、そこからさらに背景を調べてみたりと楽しみも増えます。
日本の良いものに触れてみる事で改めて日本の良さに気付けるかも知れませんよ。